私の電子回路の原点

私が電子回路に興味を持ったのは昭和40年代の小学生の頃です.NHK教育では「みんなの科学」という番組が放送されており,木曜日の「楽しい実験室」は電子工作を紹介する内容が多く一番好きな放送でした.電子ルーレットやサイコロ,インターフォンなどをトランジスタや74シリーズのロジックICや741オペアンプを使って工作をします.でも小学生の自分には部品を買って工作までは出来ないので,テレビに映る回路図を書き写すだけで十分満足でした.

そんな3~4年生の時に父に写真の電子ボード(SR-2A)を買ってもらいました.嬉しかったですね.2石のゲルマニウムトランジスタの他に抵抗やコンデンサやマイクやイヤフォンなどがついており,回路図通りに組めばラジオ,ワイヤレスマイク,水位報知器など30回路の電子工作が出来ます.とにかく夢中になって遊びました.回路図の読み方も学びました.接触不良や回路の要所を指で触ると異常発振する事も学びました.

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この時代の電子工作は皆ラジオからスタートします.ラジオはつまりアナログ回路であり,高周波回路であり,微弱信号回路であり,低周波回路であり,システム(同調,検波,増幅)です.とにか全ての要素が詰まっています.今はデジタル,アナログ,高周波,ソフトと分かれすぎていて,自分の専門外は全くダメというエンジニアが多いような気がします.そういう意味で入り口が一つしかなかった時代に電子回路を始める事が出来てよかったと思います.ですから今も私にはデジタルやアナログという区別はあまりありません.高周波やパワエレやマイコンやnVの微小信号回路も全てがシームレスなのです.

父に買ってもらった電子ボードは既に手元に無く,写真の電子ボードは最近同じものをオークションで落としたものです.これは一生の宝です.そのひとつの1石レフレックスラジオの回路図を示します.どうですか皆さんこの回路読めるでしょうか?

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レフレックスは1つのトランジスタで高周波増幅と低周波増幅を同時にさせる方式です.つまり一度増幅した信号をもう一度同じトランジスタで増幅させるのです.検波後であるけれど良くも発振しないものだと感心します.またこれだけで同調,高周波増幅,検波,低周波増幅と4つの仕事をするシステムであることを考えると,とにかく凄いと感心せざるを得ません.