技術日記

トランスの等価回路3

2026 / 06 / 16

今回はトランスのコアの磁束に焦点を当てて解説します。スライバック式を除くフォワード式やフルブリッジ式のトランスは、図1の様に1次と2次の負荷電流による磁束φ1とφ2は、大きさが同じであり、お互いがキャンセルされてコアから消失します。そして唯一存在するのが励磁束φmでIm電流によってつくられます。

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図1 負荷電流による磁束φ1とφ2はお互いキャンセルされる

重ねわせの定理から励磁束の部分のみを取り出すと図2になり、2次コイルも存在しないのと同じになります。

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図2 唯一残るのは励磁束φmのみ

トランスの損失は負荷電流による銅損にほか励磁束による鉄損があります。銅損は巻線を太くして抵抗を下げることで対応できますが、鉄損はコアの材質から来るので少々複雑です。

鉄損はさらにヒステリシス損Phと渦電流損Peに分かれます。そしてそれぞれは式1になる事が解っています。(ヒステリシス損のBmの指数は1.6~2.0が典型値でここでは2.0とした)

$$\begin{align}
Ph &\propto f \cdot Bm^2 \\[0.5em]
Pe &\propto f^2 \cdot Bm^2
\end{align}$$
(式1)

ヒステリシス損は、図3のヒステリシスループで囲う面積が小さいほど小さくなります。ですから同じフェライトでも永久磁石用と違い、トランス用はヒステリシスループの比較的小さな材料で作られています。一方渦電流損はコア材の電気抵抗が大きいほど小さくなります。フェライトは酸化鉄を主としたセラミックで、その抵抗はおおよそ数kΩ以上(正しくは抵抗率で評価)を示し鉄損は小さいと言えます。

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図3 ヒステリシス損はループ面積が小さいほど小さい

式1には両方とも磁束密度の2乗の項があり手ごわいのですが、L1を定電圧駆動する条件なら様相が変わってきます。つまり式2がBmに代入され最終的には式3になるからです。

$$Bm \propto \frac{V1}{f}$$
(式2)
$$\begin{align}
Ph &\propto \frac{V1^2}{f} \\[1em]
Pe &\propto V1^2
\end{align}$$
(式3)

式3から言えるのは、両方とも損失は1次電圧の2乗に比例するが、ヒステリシス損は周波数に反比例し渦電流損は周波数と無関係になる、ということです。