「トランスの等価回路3」「トランスの等価回路4」を通して、ヒステリシス損Phも渦電流損Peも1次電圧の2乗に比例するが、ヒステリシス損は周波数に反比例し、渦電流損は周波数と無関係になる。を述べました。(以降コアロスと呼ぶ)
これは50/60Hzの商用トランスでは無条件に有効ですが、DCDCコンバータの様に20kHzもあれば100kHzもあれば1MHzもある。という広い周波数を扱う世界では簡単ではありません。なぜなら周波数の上昇にともなうjωLの上昇に限界がありMΩやGΩにはならないからです。それから図1のように透磁率μiはある周波数以上で低下します。さらにコアロスもμiの低下付近から急激に上昇し、そのカーブは周波数の2乗を超えてきます。

DCDCコンバータにおけるトランスのコアは、使用したい周波数でロスが小さいものを選ぶ必要があります。ただこればかりはメーカのデータシートとの会話になります。そして何よりも試作と実験が大事です。
図2はTDK社のPC40コア材に数ターンほど巻いた実測値です。PC40は100kHz付近のDCDCコンバータで標準的に使われているコア材です。
グラフからインダクタンスは全周波数に渡ってほぼ一定を示しており良好です。でも等価直列抵抗は少々複雑なカーブをしています。まず10k~20kHzまでの平らな部分は巻線のDC抵抗によるものです。次の20k~100kHzまでの+6dB/octの上昇はヒステリシス損と巻線の表皮効果によるものです。そして100kHz以降の+12dB/octの上昇は渦電流損によるものです。その渦電流損も300kHzからは+12dB/octを超えて急激に上昇しているのがわかります。つまり「渦電流損は周波数と無関係になる」が崩れ始めるポイントです。もしも300kHz以上でDCDCコンバータを設計するなら、その周波数にあったコア材(透磁率が小さい)を選ばなければなりません。

これらを踏まえてトランスを設計するのですが、「トランスの等価回路3」でも述べたように、負荷電流による1次と2次の磁束はおたがいにキャンセルされるので、設計は励磁束について進める事になります。図3はフォワード式DCDCコンバータのトランスの励磁束の設計例です。フォワード式はB-Hカーブの第一象限のみを使用し、毎回リセット型スナバで励磁束をリセットします。磁束はΔ50~200mTで設計します。

図の最大磁束密度の390mTと残留磁束密度の55mTはPC40の基礎データです。もしもフルブリッジ式DCDCコンバータとするなら、第三象限も使用するのでスナバ回路は不要になります。そして効率の良いDCDCコンバータになります。
